帝塚山大学版オリジナル源氏物語かるた
〈源氏物語かるたプロジェクト〉

 百人一首のかるたでは、歌人の肖像(歌仙絵)が描かれているのに対して、物語かるたでは歌の風景や場面を描きます。伝統的な源氏物語かるたは、貴族や大名の姫君のために名筆で書かれた豪華なもので、54帖からそれぞれ一首ずつ、巻名に関わる歌54首を選んでかるたに仕立てたものです。博物館などで展示されるミニチュア色紙絵というべき美術品であり、学校や家庭で手軽に教材として利用できるものではありません。大石天狗堂さんでは、専門の書家の文字と画家の絵を入れた現代版の「源氏歌かるた」を販売していますが、数万円という高額なものです。文字も変体仮名なので国文学科で変体仮名やくずし字を読めるようになった学生以外は楽しめるものではありません。かといって、それらの図柄を複製・模倣したかるたを勝手に作るわけにもいきません。
 そこで考えたのが、独自に図柄を描き、文字もパソコンの行書フォントで入れて作るオリジナルかるたです。大石製「源氏歌かるた」も色紙絵を参考にしたオリジナルではありますが、私たちの企画は、学生44名が協働して作り上げることで、全体の統一より、さまざまな個性を表現することでした。しかも、美術を専攻する学生ではなく、文学を学ぶ学生が、源氏物語の場面と和歌を十分に読み解いて図案化することに意義があります。長年「絵入源氏物語」や「源氏物語絵巻」の研究をしてきたことと、源氏物語千年紀展の委員として多くの美術作品を見てきた経験を活かして、物語場面の絵画化のポイントをアドバイスして指導、図柄が歌の内容と合っているかを確認しながら仕上げました。学生は、かるたを作るだけでなく、その学びの基本である物語の内容と和歌についての解説を分担執筆しました。2014年度に活動を開始し、帝塚山大学創立54周年(源氏物語54帖に因む)の2018年度末に完成を目指しました。
 その間、図書館などで試作品と解説書の簡易印刷を展示したり、平等院と本学の共催で行った歴史講座や多摩大学との合同発表祭などで紹介したりと、少しずつ公表してきましたが、学生個々の著作権に関わる作品なので、このサイトや大学HPなどで大々的に広報することは控えてきました。学生の頑張りを少しでも早く公表したいと思いながらも、さすがに54帖の物語歌を学生に分担してもらう企画ですから、すべての作品が揃うまで待つしかありませんでした。一人の学生が3巻を担当してくれた例もありますが、強引に押しつけて仕上げを急がせることは控えました。かるたの絵など簡単に描けるのでは、と思われがちですが、源氏物語の文章を詠み込んで、そのイメージを納得できるまで考えて描くのですから、簡単な話ではありません。「絵入源氏物語」などを参考にすればよいとはいきません。かるたとして文字の邪魔にならないようにすること、黒い文字に重ならない色使いでなければならないこと、そして学生個々の感性が何よりも大切です。私自身も絵を描くのは好き(上手ではなく)ですが、一人ですべて描いてしまうと画一的でおもしろみがありません。44名の個性のぶつかり合いがおもしろいのです。手に取った方の多くは、まず「きれいですね」と言ってくださいますが、むしろ、個性的でおもしろいとの評価が何よりうれしいのです。今回お送りした中で、国文学研究者かつ大学教授の方々からは、この指導は大変だったでしょうと、ねぎらって下さいました。そこなんです。いえ、私の指導の苦労がどうとかではなく、多数の若者がそれぞれ工夫しながらさまざまな筆記用具を用いて描き、解説もそれぞれの関心に応じた文章で仕上げたところにこそ注目していただきたいと考えています。

 参考図書
  • 清水婦久子監修・編集『かるた〈歌留多〉で学ぶ源氏物語』(帝塚山大学出版会、2019年)
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1配布用源氏物語かるたの箱
 学校などで活用していただきたく、配布用として、簡易印刷して作成した。本格的なかるたを作成するにはコストがかかりすぎるので、いろいろ検討した結果、最も安価でできるハガキサイズに印刷、箱は市販のはがき100枚が入るものを探して2箱に分けて梱包した。 箱の表には、巻名のみを入れた札92枚を見本としてはがき用の厚紙に印刷して貼り付けた。
 読み札と取り札を分けて梱包する方法もあるが、4枚1組という特長を活かして遊んでいただきたいこと、源氏物語の巻名と物語の順序に親しんでいただこうという意図で、桐壺巻から篝火巻までを前半、野分巻から夢浮橋巻までを後半として、箱の表紙だけでも楽しんでいただけるようにした。
左下には、帝塚山大学のロゴマークを入れた。
  2配布用かるたの梱包作業
 はがきサイズに200部、業者に発注して印刷(左下の束)、前半と後半に184枚ずつに分け、市販のはがきサイズの白箱に梱包、前半の箱には、本かるたの趣旨と和歌の口語訳を記した説明書、後半の箱には、アンケートはがきを同封して、OPP袋に入れて、2箱セットのかるたが完成。 
学生10名が2日がかりで作業。同封する説明書も、冊子の形に印刷して折って綴じて作成。
 学部の教員に配布した後、国内外に発送準備。関連書籍『かるたで学ぶ源氏物語』刊行の帝塚山大学出版会事務局から、一緒に発送していただいた。
3はがき印刷したかるた(見本)
 はがきに2枚に、文字のみの読み札と巻名のみの絵札、歌と巻名を入れた絵札と下の句の絵札を2図ずつ合わせて印刷した。かるたサイズ、カードサイズ、名刺サイズなどで見本を手元のプリンタで印刷することは可能だが、100枚単位で業者に364図を委託するのは難しく、はがきならば半額で印刷できること、大学に出入りの『かるたで学ぶ源氏物語』を印刷してくださった業者が見本としてはがき印刷をしてくださったことから、PDF入稿で依頼した。
 はがきサイズのままでも、読み札と取り札として遊べるが、学校などでは生徒・学生に配って切り取ってもらえば、かるたサイズになる。四辺を切らなくても、左右を切るだけでも。いずれは、かるた・カードサイズの札を作るとして、まずはこれで体験していただければ。
  4オリジナル源氏物語かるた
 (株)大石天狗堂版
 配布用とは別に一般の「かるた」の体裁で5部のみ作ったのが、こちら。百人一首競技の公式かるたを製作販売していらっしゃる老舗「大石天狗堂」さんに仕上げていただいた。Illustratorのaiファイルを作成してデータ入稿、色校正の後、かるた専用の厚紙に印刷カットしていただいた。4種類すべて作成する予算がなかったので、まず和歌と下の句の絵札だけを作っていただいた。今年度は、巻名のかるたを作る予定で、文字だけの読み札については検討中。右に置いた箱の蓋にすべて印刷していただくと高額になるので、紫地の蓋と箱(片開きが本格的)を大石天狗堂さんに依頼し、自宅で印刷した紙を貼り付けた。それなりに形になったかと。